岐阜ロイヤル劇場 35ミリ映画の世界

岐阜ロイヤル劇場は現在では珍しく、35ミリフィルム映画を上映する昭和名作シネマ専門館として運営されている。

運営は、岐阜土地興業公社の運営館でロイヤル劇場の他、近くで4っのスクリーンを持つミニシアター「シネックス岐阜」、関市内のシネコンシネックスマーゴを運営している。

ロイヤル劇場が現在の上映内容となったのは、映画館のシネコン化が進む頃からということで、入れ替えなし600円均一の入場料だ。

上映映画が「昭和名作シネマ」ということで、1950年代から1980年代の日本映画の旧作を扱っていることから、お客さんは高齢の男性客が多い。

私自身もこの映画館の存在は前から知っていたものの、上映されている映画がピンと来ず、長い間足を踏み入れる機会はなかったが、今年(2022)柳ケ瀬の夏祭りが久々に実施されることになり、この映画館で昭和歌謡のど自慢ショーが開催されることになり、これを機会に初めて入館した。

ビル外部の装飾は前から見ていたものの、映画館内部もたっぷり昭和レトロ風で、座席も今の映画館の深い背もたれとは違い、ちょっと窮屈なサイズのいかにも昭和な感じだ。

一番驚いたのは、座席数の多さもさることながら、スクリーンが広く、フィルム映像を大きく映して楽しめる感じが素敵でした。

それ以来、何度か映画を観にロイヤル劇場を訪れているが、客席にお客が満杯になるということはなく、大体いつも10数人から20人程度の客数である。
確かに現在、映画人口は減少傾向であり、コロナ禍の多大なる影響が去ったといっても、全国的に映画産業は厳しい状況だ。
それに比べれば、ここはある程度の固定客数を確保できていると考えることもできるが、それにしてもあの大きなスクリーンで観るにはなんともさみしさは否めない。

もう少し、顧客層が広がる作品(例えば名監督シリーズとか、名優作品シリーズとか)を上映すれば、広域圏からの客の入込みも期待できるのではないかと思う。

もしかしたら、上映できるフィルム映画に規制があり、思うような名作、旧作を自由にチョイスできないという運営サイドの問題があるのかもしれない。

デジタル映像作品の上映が当たり前の現在では、以前に撮られたフィルム作品のデジタルリマスター化も進み、多くの旧作がデジタル上映されている(もちろんストリーミングも含め)から、いずれはどの作品もデジタルフィルムでどこでも見ることができるようになるだろう。

それはそれでとても嬉しいことなのだけれど、35ミリフィルムに直接刻まれた、音と光の生々しさは、やはりフィルム映画が勝っているような気がする(フィルムに刻まれたノイズや瑕疵も含め)のだ。

世界からフィルム映写の機会が無くなるなんてなんとも寂しい気がするので、ロイヤル劇場さんにはなんとか頑張って今のスタイルを続けてほしい。

そのためには、もっと様々な名作や旧作を広く上映してもらい、全国からフィルム映画を観たいお客さんが詰めかける映画館となってほしいのだ。