にっぽん泥棒物語 1965年山本薩男監督作品

以前からストリーミングのリストにあったのだが、なぜだか見逃していた作品。

戦後直後の東北地方を舞台に泥棒稼業(蔵破り)で稼いでいた男(三國連太郎)が、保釈中に働いた泥棒稼業中に遭遇した列車転覆事故について、逮捕された元国鉄職員と獄中で出会い、そのえん罪を知ったのだが、顔見知りの刑事(伊藤雄之助)に脅されて嘘の証言を捏造されてしまった。
しかし、保釈中の主犯格の親子に出会い、真実を証言することを決意するというストーリーだ。

ドラマ前半は、泥棒稼業で刑務所に送られる度に、次は絶対に失敗しないと懲りないコメディ色の強いものであったが、列車転覆事件に遭遇して以来、ようやく更生しようと誓い、過去を断ち切り妻子とともにまっとうな人生を過ごそうとするも、えん罪を立証することにより家族の人生が暗転することを恐れるシリアスな物語へと変化してゆく。

不思議なストーリー展開だなと思ったら、案の定これは戦後実際にあったえん罪事件(松川事件)をモデルにしているということだ。

1949年に福島の松川駅周辺で東北本線の列車が転覆し、乗務員三名が死亡する事件がおこった。事件で逮捕された国鉄職員ら20名は自白強要により有罪となったが、1961年には死刑判決から5回の判決を経て全員が無罪を勝ち取った。

この映画は、その判決後に制作されており政治的な影響はないものの、明らかに松川事件をモデルにしたものであり、作品そのものにもリアリティーが影響している。

証言台に立った主人公が最後に「俺たちを捕まえる警察が、俺たちよりも嘘つきだったというのはいったいどういうことでしょう」というオチのセリフが味噌であった。

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