1640日の家族 

映画タイトルからは、まったくストーリーが想像できないが、原題はフランス語で"La vraie famille"(真実の家族もしくは本当の家族)だそうで、里子を引き取った家族の1640日の記録という意味らしい。

フランスは児童保護制度が発達しているらしく、親の経済状態や家庭環境によって、親の親権を一時停止し、子供を里親に預けるという制度が定着しているそうで、この映画では、幼児の頃に里親として引き取った子とその家族の日々の記録というストーリーだ。

日本で里親というと、すでに両親が何らかの事情で子供を養育することができない子を保護施設で保護し、その後親代わりの里親に出すというイメージが強いが、フランスでは行政がもっと積極的に子供を保護(実親から隔離)し、子供の権利を守るという立場から措置されているようだ。

だから、里親がわが子(里親には二人の実子がいる)と同様に愛情を注ぎ、わが子のように育てていくつもりであったこの母親にとって、突然と役所から実の父の親権を回復した措置は青天の霹靂であり、頭では理解できても里子を手放すことは身を切られるような苦痛を伴うこととなっていく。

子どもの権利に対して積極的な介入をするフランスのような国の制度は、われわれ日本人の感覚では厳しすぎると感じ、里親に感情移入しがちだが、人権を政策の根本に位置付ける西洋諸国は、理性と知性の蓄積の中で制度を社会化してきたという歴史を持つ。

どちらが正しいかということはこの映画でも示されてはいないが、子と親(実親であれ里親であれ)の情愛は世界共通であり、子供の未来を考えていく現代社会の家族の一つの姿を映し出しているともいえるのではないだろうか。


ラストシーンで、実父子をショッピングセンターで見とめた家族は声をかけることなく二人を見守る。