銀平町シネマブルース 

2023年に公開された城定秀夫監督の作品である。この映画を観て初めて城定監督のことを知ったわけだが、とても巧みな画面構成だったため興味を持ち調べてみたら、あるわあるわ40作品程の監督作品。ソフトポルノ作品やVシネ系まで扱う幅広さ。近年は年間5,6作…

早春 小津安二郎作品

小津映画を語る人には、なぜかあまり取り上げられない映画であり、その映画評を聞く機会もなぜか少ない。私は戦後の小津映画に度々登場する女優、淡島千景が好きである。淡島は、それまでの小津映画には、『麦秋』(1951)と『お茶漬けの味』(1952)に出演して…

宗像姉妹 1950年小津監督作品

この映画を以前から観たいと願っていたが、ストリーミングのコンテンツには見つけられず長い間お預け状態だったが別のサービスでようやく見ることができた。1950年と言えば、後年にいわゆる『紀子三部作』と言われる小津作品の代表作の最初の一作『晩春』が…

お茶漬けの味 1952年小津監督作品

俳優、佐分利信が好きだ。なぜだか自分でもその理由がはっきりわからないが、出演作品の中で見せる彼のたたずまいがとても印象的なのだ。小津作品の中でも多くの作品に出演しているが、その中でもこの作品や戦前の「戸田家の兄妹」など特にすばらしいと思う…

にっぽん泥棒物語 1965年山本薩男監督作品

以前からストリーミングのリストにあったのだが、なぜだか見逃していた作品。戦後直後の東北地方を舞台に泥棒稼業(蔵破り)で稼いでいた男(三國連太郎)が、保釈中に働いた泥棒稼業中に遭遇した列車転覆事故について、逮捕された元国鉄職員と獄中で出会い、そ…

しとやかな獣 1962年 川島雄三監督作品

ここで川島雄三監督の映画を取り上げていないことに気が付いた。 監督の作品はこれまで、『洲崎パラダイス赤信号』『幕末太陽傳』『雁の寺』『女は二度生まれる』を見たが、どれも素晴らしく唸らされる作品であったが、この作品もさらに素晴らしい内容で驚い…

蒲田前奏曲 2020年公開作品

もちろん見てみようと思ったきっかけは、『蒲田行進曲』という深作欣二監督1982年の名作を思い出したからである。原作者のつかこうへいが自ら脚本を執筆した当時大変ヒットした映画だった。もう一つあるとすれば、最近日本の映画史的なことに関心があり、松…

赤線玉ノ井 ぬけられます 神代辰巳監督作品

タイトルがすでにこの映画の尋常ならざる雰囲気を伝えている。1974年の作品で、日活がロマンポルノ映画の製作に乗り出した71年以降の作品の一つである。映画は、昭和33年の売春防止法施行を目前にした色町(玉ノ井)の姿を追いそこで繰り広げられる女達の人間…

好人好日 渋谷実監督 1960年作品

映画タイトルのせいか、ストリーミングにあってもなかなか見ることのなかった作品であったが、思い切って見て観たらこれがすこぶる良い映画だった。渋谷実監督作品も初見であったため、あまり期待してはいなかったが、開始早々現れた東大寺大仏に話しかける…

月は上りぬ 小津安二郎脚本

1955年に田中絹代の監督で公開されたこの作品は、戦後すぐの頃(終戦前とも)小津により作られたが、制作会社との折り合いがつかずずっと棚上げになっていたものを、田中絹代の監督作品として制作されたというものです。やはり、小津脚本の作品ならでわの小津…

戸田家の兄妹 小津映画

この映画は戦中の1941年に、日中戦争から帰還した後、小津監督により制作された。小津映画の中では、私自身とても好きな映画の一つである。この映画のストーリーは、戦後制作された小津映画の代表作とも言われる、東京物語ときわめて類似している。(もちろん…

岐阜ロイヤル劇場 35ミリ映画の世界

岐阜ロイヤル劇場は現在では珍しく、35ミリフィルム映画を上映する昭和名作シネマ専門館として運営されている。運営は、岐阜土地興業公社の運営館でロイヤル劇場の他、近くで4っのスクリーンを持つミニシアター「シネックス岐阜」、関市内のシネコン、シネッ…

秋刀魚の味 小津映画

小津安二郎監督が1963年の誕生日に60歳で亡くなったため遺作となってしまった映画だ。 公開は1962年(私の生まれた年だ)これまでストリーミングで多くの小津作品を観てきたが、なるべく初期作品から鑑賞したいと思い、つい最近初めてこの作品を観た。カラー作…

月は上りぬ 小津安二郎脚本

1955年に田中絹代の監督で公開されたこの作品は、戦後すぐの頃(終戦前とも)小津により作られたが、制作会社との折り合いがつかずずっと棚上げになっていたものを、田中絹代の監督作品として制作されたというものです。やはり、小津脚本の作品ならでわの小津…

太陽を盗んだ男 沢田研二主演

1979年10月に公開された映画であるが、当時は観ていないし、こんな映画があったことさえ知らなかった。近年、沢田研二の活動経過が気になり、ウィキペディアなどで調べていたら、こんな映画に出ていたことを知り気になっていた。 ストリーミングで作品があっ…

パッチギ! 박치기 井筒和幸監督

2004年制作、2005年公開の映画である。映画館で観たという記憶はないので、ビデオまたはTVの放映を観た記憶があるが、改めてストリーミングで観た。当時も素晴らしいエンタメ映画だと思っていたが、改めて観てさらに想いが深くなった。何よりも、導入部分で…

午後の遺言状 新藤兼人監督作品

この作品は、1995年の公開作品であるがリアルタイムには観ていなかった。 何も知らないで観ていたら、あまり感動することもなかったかもしれない。この作品の主人公である、杉村春子も音羽信子(新藤兼人夫人)もすでに鬼籍に入って久しい、昭和の女優である。…

長屋紳士録

戦後、小津安二郎が戦地シンガポールからようやく戻れたのが昭和21年(1946)二月で、翌年44歳になった小津が二カ月で書き上げたのがこの映画の脚本であった。舞台は戦後直後の東京で、九段で親と離れ迷子となっていたという子供を、築地の長屋に連れ帰ったと…

1640日の家族 

映画タイトルからは、まったくストーリーが想像できないが、原題はフランス語で"La vraie famille"(真実の家族もしくは本当の家族)だそうで、里子を引き取った家族の1640日の記録という意味らしい。フランスは児童保護制度が発達しているらしく、親の経済状…

死の棘 小栗康平監督

小栗監督作品を最初に見たのはどの映画だったろうか?きっとこの"死の棘"かまたは"泥の河"だったろうと思う。泥の河はきっと、テレビで放送されたものを観たように思う。死の棘は1990年にカンヌ審査員グランプリを取った作品なので、その時に映画館で観たの…

逆光 須藤蓮監督作品

映画の後に開催された、監督のトークショーを観るまでは、逆光というタイトルや映画の時代背景から、やはりその時代を経験してきた年代の監督作品だろうと思っていた。70年初頭という、まだ若者たちにプライドがあり、社会との関係を肌で感じながら青春を送…

映画の見方

映画の見方といっても、それは技術的な批評論とかということではなく、映画を観るときの姿勢というか、スタンスというか、私なりの見方があります。映画を観ようとする時、多くの人はその映画の情報をある程度得てから、その映画を観ようとすると思いますが…

あなたの顔の前に 韓国映画

ホン・サンス監督作品を初めて観た。それも、ホン・サンス監督作品について何も知らないまま観た。母親の死後、母国を離れずっとアメリカで暮らしていた姉サンオク(主人公)が、突然帰国し妹と会った。妹にも帰国の理由を明らかにしない姉であったが、元女優…

映画館で映画を観ること

映画はもともと映画館で観るものであった。それは長い間当たり前すぎる程当たり前のことだったのに、いつのまにか、テレビでの放映が開始され、録画ビデオが一般家庭に普及すると、レンタルビデオを借りて家で観ることが普通になった。さらにパソコンが普及…

オアシス(oasis) 韓国映画

この映画を観て初めて、イ・チャンドン監督のすばらしさを知った。この映画に最初に出てくるのは、真冬に半袖で平気そうに歩く変わった男である。男は、店先で勝手に売り物の豆腐を食べ始めるが、見かねた店主は「牛乳もどうだ」と渡すと、男は「テヘ牛乳は…

バーニング 韓国映画

2019年に公開された韓国映画で、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作としている。イ・チャンドン監督作品「オアシス」を観て興味を持ちストリーミングで観た。原作を読んでないので全く白紙状態で観た。さえない引きこもりのような生活をする主人公ジョ…

カモンカモン C'MON C'MON

主演のホアキン・フェニックスの前作『ジョーカー』も、監督のマイク・ミルズの『人生はビギナーズ』も見てなかったけど、なんとなく面白そうで映画を観た。全編モノクロで映し出されるアメリカの各地の風景が、なんだかレクイエムのようなもの悲しさで、夕…

ひまわり

今回も旧作映画シリーズだ。 公開50周年記念ということで再上映された、カトリーヌ・ドヌーブ主演映画ひまわりを観た。特に今春からのロシアのウクライナ侵攻により、撮影現場となったウクライナがクローズアップされ、全国で上映されているようだ。 作品の…

風の丘を越えて(西便制)

以前ビデオを借りて観て、とても心に残った映画である。 イム・グォンテク監督の1993年の作品です。韓国の放浪芸であるパンソリの名手を題材にした、家族離別の物語です。パンソリ(房歌)とは、鼓手と歌い手の二人による口承芸能であり、物語りを歌と語りと振…

ベルイマン島にて

ベルイマンというのが映画監督の名前であることをこの映画で知った。20世紀最大の巨匠との名声を持つイングマール・ベルイマン監督が晩年に住んだ島に 訪れた映画監督カップルが過ごした日々を、ベルイマン監督へのオマージュと、現実と創作を織り交ぜた劇中…