風の丘を越えて(西便制)
以前ビデオを借りて観て、とても心に残った映画である。
イム・グォンテク監督の1993年の作品です。
韓国の放浪芸であるパンソリの名手を題材にした、家族離別の物語です。
パンソリ(房歌)とは、鼓手と歌い手の二人による口承芸能であり、物語りを歌と語りと振りで表現する19世紀の朝鮮で人気のあった芸能だそうです。
パンソリの伝承者である旅芸人が兄妹(血縁関係のない養子)を連れて、村々を回りながらパンソリの名手として二人を厳しく育てるが、あまりの厳しさと時代の変化の中で、兄は家出して家族から離れてしまうが、後年二人を探す旅の途中で妹と巡り合うが、兄であることを打ち明けることなくその場を離れるというストーリーだ。
パンソリの歌の中心にある『恨』の悲哀と、家族、兄妹の心情が、歌の中で絡み合いながら、悲しみを増幅させる。
何よりも妹役(主人公)のオ・ジョンへの歌が切々として素晴らしい。どうやら本格的にパンソリを勉強した経験を持っているようだ。
この映画は、制作当初それほど期待されていなかったようだが、韓国では空前のヒットとなり多くの映画賞も獲得したようだ。
また、それ以前は社会的評価が低かったパンソリのような伝承芸が日の目を見るようになり、今日ではユネスコの無形文化財に登録されるに至っている。