パッチギ! 박치기 井筒和幸監督
2004年制作、2005年公開の映画である。
映画館で観たという記憶はないので、ビデオまたはTVの放映を観た記憶があるが、改めてストリーミングで観た。
当時も素晴らしいエンタメ映画だと思っていたが、改めて観てさらに想いが深くなった。
何よりも、導入部分である前半のケンカ?の部分までで映画的スペクタクルを一気に感じさせて、観客を惹きつける。
1968年の京都を舞台とした時代設定であるが、公開された2005年時点でも『こんとなこと本当にあったの?』と思うほどの暴れっぷりで、高校生(朝鮮高校と日本の高校)がこんなにヤンチャだったことは今は昔の感を否めない。
1960年代から 70年代にかけて、朝鮮高校と日本の高校生との間の抗争(ケンカか?)は全国で起こっていた、映画のような新聞沙汰になることもあった。
学生運動の沈下やケンカや暴力が社会悪として排除されだすと、その動向は排外主義のイジメや差別行為として90年代あたりから陰湿化していった。
そんなことはともかく、60年代末当時の日本の社会的な状況を、楽しいエンタメとして昇華させているこの作品は素晴らしい。
なによりキャストが魅力的だ。
もちろん、主演の沢尻エリカの可愛さには、だれもが心を奪われるだろうが、よく見ると当時はまだ駆け出しの若手俳優が沢山出演している。
朝鮮高校の女不良チョン・ガンジャ役の真木よう子のキレっぷり、ガンジャの友人ヘヨン役で前半に登場していた江口のりこの可愛さには驚かされた。
準主役の朝鮮校生リ・アソン役の高岡蒼祐とその友人モトキ・バンホー役の浪岡一喜は当たり役だった。
そのほか、ケンドー小林、桐谷健太、オダギリジョー、余貴美子、大友康平、笹野高史、木下ほうかなどのバイプレーヤーもいい味出している。
いやいや、俳優が良いだけではない。
あの時代の雰囲気をコミカルにシニカルに表したストーリー、そして王道である青春のラブストーリーを見事に謳いあげたエンターテーメント性は後世に残る日本映画と言えるのではないだろうか。
映画の通奏低音であるフォーククルセーダーズの歌「イムジン川」が、当時発売中止になったエピソードなどもうまくストーリーに絡め、フォークルの「悲しくてやりきれない」「あの素晴らしい愛をもう一度」などの曲が場面にうまく効いている。
そもそも原作が中学時代に「イムジン川」の曲を知り、その曲をフォークルに教えたという松山猛(主人公松山のモデル)というのも、この映画の面白さの深みを生み出している。